温度応力解析
高度な解析を自社でやりきる理由
構造物の施工に欠かせないコンクリート。これは、型枠の中に生コンクリートを流し込んで、固まることによって構造物が出来上がる。ただ、この固まっていく段階でセメントの粒子と水による化学反応が起きる。コンクリートの中心部分では70~80度にまで温度が上昇し、その発熱により、膨張したり収縮したりといった力が加わる。それは、コンクリートのひび割れや強度の低下などにつながりかねない。そこで、設計段階でこの危険性を回避することが求められる。そのために温度の上昇の仕方、力のかかり方をソフトウエアを使って解析するのが、温度応力解析である。
自分たちでやってみよう
―この温度応力解析に取り組もうと思ったきっかけは?
樋口:土木工事の共通仕様書には、コンクリートに対する検討をするように書かれています。現場から「どう対応すればいいですか?」という声が届き、どうしようかと本腰を入れたわけです。
丸岡:確かに土木工事の共通仕様書には、「事前にセメントの水和熱による温度応力及び温度ひび割れに対する検討を行わなければならない」と書いてあるんですよ。では、それをどう検討するのか。実は、どこの会社でもそこまで深くはやっていないというのが現状でした。必要に応じ、外部機関に外注していたのです。しかし、協力会社や関係者に相談しようにも県内ではやってくれるところがありませんでした。じゃあ自分たちでやってみようというところが始まりです。
―ホームページで他社からの依頼も受けますよと紹介したところ、問い合わせもあったということですが。
樋口:いくつかの問い合わせをいただきました。多いのは下水道施設などの解析です。水を扱うため、ひび割れは漏水に直結します。発注者様からの要望で解析をさせていただきました。
―発生確率が高い箇所を減らすために、どういう方法が。
樋口:誘発目地をつくることによって、ひび割れの発生を制御します。養生方法を工夫し、急激な温度変化を抑えようという考え方もあります。また、鉄筋量を増やして耐力や抵抗性を上げる。あるいはセメントを変えるなど、色々な組み合わせによって発生する確率を抑えます。
―この温度応力解析に力を入れようと考えたのはどのような判断からでしょう。
樋口:現場からの問い合わせに自社で対応しようと考えたからです。大手建設会社で設計施工の担当だった丸岡部長が当社に入社されたこともあり、自社でやってみようということになりました。専門知識がないとやはり難しいことなので。
専門的な知識を生かして
―丸岡部長はコンクリートの専門家?
丸岡:大学ではコンクリートが専門でしたがコンクリートの専門家というわけではありません。ただ、土木の設計施工はコンクリートを抜きに語れません。ちょうど蜂谷工業で設計センターを立ち上げたいという話が出ていて、それまで私がやってきた経験が生かせるのかなと。温度応力解析だけではなくICTなど新しい技術やサービスに力をいれようとしていたタイミングでした。これまで外注に頼っていたものを自社でできるようにしようと。対応を速くできますし、経験とノウハウを社内に蓄積していくことは大きな財産にもなりますしね。
例えば、尋ねられたことに対し、レスポンスよく答えられるかどうかですよね。それと、発注者に根拠をきちんと示した上で承認を求めることができるかということですよね。やはり公共工事なので、そういったところを評価していただけるとありがたいです。
―温度応力解析を利用するメリットは?
丸岡:図面通りにつくって、それでひび割れが出てもしょうがないと割り切ることもできるでしょう。しかし、このような温度応力解析を利用して、あらかじめ耐久性の高いものをつくっておくほうが壊れてから直すより安くつくのです。これからは予防保全の時代です。